最近は自宅サーバの Wiki じゃなくてあえて Evernote を使うことが増えていました。自宅サーバの Wiki に繋ぐ必要がなく、iPod touch でも自由に編集可能、ローカルにキャッシュしておけばネットワークが切れていても大丈夫、など Wiki にないメリットがやはり大きかったのです。
しかしあるとき気づきました。
Evernote は勝手にデータに手を加えている
ということに。
Evernoteは正確なテキストデータを保持しない
Evernote の考え方がどうなのかはよく分からないのですが、Evernote で構造化テキストが使えたら便利だなとは以前から思っていましたし、そういう意見は自分以外にも目にしていました。
自分も Markdown を使ったり reST を使ったり1していたのですが、ある日、箇条書きをネストさせたときに気がついてしまいました。
ホワイトスペースを維持できていない
ことに。
Evernote を使って長文を書くときは以前紹介した mobile版 + 外部エディタを使う方法 で書いているので、エディタ上で正確にホワイトスペースの調整をしながら書いています。勘違いのはずがありません。2
これは困ります。普通の文章だけを書いているならいいんですが、何らかの記法を使っている場合はホワイトスペース一つが命取りになります。少しの間だましだまし使っていましたが、待っていても恐らく何も解決しないことから、別な選択肢を試してみることにしました。
Evernoteそのものの置き換えは志向しないことに
最初は Evernote そのものをやめる方向に持っていこうと思ったのですが、以下の理由で断念しました。
- 他のアプリやサービスとの連携の面で Evernote が抜きん出ている
- 例えば Twitter アプリとの連携において Evernote のように使うことができるサービスを探すのは難しいです
- タグ付け、検索性など、純粋に書くだけでなく保存し、検索し、再利用するシーンにおいても他のサービスより便利
Evernote を完全に置き換えるのは容量の問題を除いても難しいです。Google Docs と連携するタイプのノート、メモサービスもありますが、Evernote 並みの完成度を期待するのは難しいですし、より「書くこと」に特化したノート、メモサービスではテキスト以外のデータを保存できなかったりして、根本的に置き換えるのは不可能だったりします。
Simplenoteを併用する
ということで「書き終わりがあるものを書く」場合は Simplenote を使うことにしました。「書き終わりがあるもの」というのは
- 日記などにアウトプットすることが目的
- ファイルに落とし、rst2ody.py などで紙前提のデータとすることが目的
で、最終的には Evernote や Simplenote から削除されるものを言います。
なぜ Simplenote になったかというと、
- スマートフォンアプリ, PC/Mac アプリ, Web UI が揃っている
- 最初に目についた
- 十分速かった
という理由です。
SimpleText という似たサービスも試したのですが、サービスの全体像が分かりにくく、Mac 上では結局「テキストファイルを編集する」というスタイルになりそうなのでやめました。データストアの実体がファイルであってもよいのですが、編集段階でファイルであるということは意識したくなかったからです。それだったら Dropbox と大差ないわけで。(少なくとも PC 上においては。)
現在の構成
- Evernote ( iPod touch / Mac / Win / Web)
- Simplenote (iPod touch / Web )
- Notational Velocity ( Mac )
- JustNotes ( Mac )
です。Windows 用のアプリは調べていませんが、Simplenote のサイト上で紹介されています。
基本的には Evernote は Evernote 社の提供するもので閉じていますが、Simplenote の場合は PC 上のアプリがないみたいで、これは第三者の提供するものを利用するようです。
それが JustNotes と Netational Velocity ですが、JustNotes は enex ( Evernote の export データ ) の読み込み用で、実際に読み書きに使っているのは Notational Velocity です。
サービスの比較
以下は自分で比較したときのメモです。何かのお役に立てば幸いです。
Evernote
すべてを記憶する | Evernote Corporation
- リッチテキストを扱える
- 様々な形式のデータを扱える
- 画像や PDF を OCR に掛けてテキストで検索できる
- タグ付けの他にノートも複数作れる
ただし、リッチテキストやマルチメディアデータ周りで iPhone などモバイルデバイスに比較的強い制約がある。
また、プレーンテキストデータを勝手に加工してしまうためにコピー&ペーストした際に改行が落ちる、各種 Wiki, Markdown, reST など空白文字に意味のある記法を使うとそれを保持できないなどの問題あり。
改行の問題は比較的有名だが、改行以外にもホワイトスペースで問題が出るとはしばらく使っていても気づかなかった。
Simplenote
Simplenote. An easy way to keep notes, lists, ideas, and more.
- テキストしか書けない
- 単純なので iPhone アプリも PC 向けアプリもとにかく速い
- PC向けアプリは公式版はない?
- free版でもバージョン管理できる(max 10 / premium 30)
- free版ではメールからノートを作成できない
- Web UI を「広げる」user script 有り
PC向け公式アプリはないが API は private beta 状態。
freeアカウントでも編集履歴を保持してくれるのは場合によって便利そう。仕事やじっくり PC に向かってしか書かないようなものなら自分でバージョン管理するのであまり必要ないかもしれないが。
また、iPhone アプリで Evernote のように明確にローカルにキャッシュするアクションがないように見える。もしかするとすべてのデータを自動的にキャッシュするのかもしれない。プレインテキストしか扱えないのならそれで十分現実的か。
Mac用アプリの比較
Notational Velocity
- 標準的な UI の Mac 用 Simplenote クライアント
- 上下2分割しかないのが個人的には不満
- ノートの内容とタイトルは分離(JustNotes は本文の1行目がタイトル)
- 明示的に Synchro する UI がない(ただちに保存されるらしいが feedback がない)
- 検索と新しいノートの作成が同じアクションでできる
- 操作の速さに対するこだわりが感じられる。説明を読んでもたぶん分かりにくいので実際に試してみてほしい。Google Chrome のアドレスバーのようなもの、と言えば少し分かりやすいか。
- ノートの保存方法を選べる
- plain text, HTML, RTF, DB
- ノートの暗号化が可能
書いている途中で指定のフォントとは明らかに異なる見た目の文字が出てしまうのはやはり日本語フォントが指定不能だからだろうか。
現状ではタグがうまく同期できていないようだ。今後に期待。ただし書き終わったら捨てるのを前提にするのなら不要かもしれない。
JustNotes
JustNotes - notes application for your Mac
- Mac 用 Simplenote クライアント
- タイトルと本文の区別がない(1行目がタイトル)のですぐに書き始められるしすぐにタイトルを変更できる
- 保存は sqlite
- 全体に動作は機敏
- かなり頻繁に synchro する
- UI は Mac の標準的なものよりは Widget, Gadget 的
- Markdown 記法対応(アプリ内でレンダリングできる)
- Evernote の enex を import 可能
enex の import 機能はとても魅力的。メタデータを捨てずに Evernote からデータを移行するには enex が import できなければいけない。
ただしフォントを Monaco にしても正しく反映されていない気がする。
今後
基本的には
- 保存して見返すものは Evernote
- 他のサービスとの連携は Evernote
- 構造化テキストを使ってがっつり書いてアウトプットするものは Simplenote
- とにかく今すぐ書きたい場合は Simplenote
という形でいこうかと思っています。Evernote はやはり当初怖いなと思っていた通りデータが無為に溜まってしまいがちでちょっとまずい状況です。できるだけ早めの吐き出し、移行を目指して作業していこうと思います。
Simplenote での吐き出しはとにかく速いのが気に入っています。上に挙げた自分の目的とは違いますが、書いて捨てるという意味では付箋ソフトなどの代わりにも使えるくらい十分に速いです。しかも自動的に様々なデバイスで同期が取れるので、一昔前の「特定のデスクトップに束縛されてしまう付箋」よりずっと便利だと思います。実際、ちょっとしたメモをその場で書くにも使っちゃってます。Notational Velocity はその辺りのとにかく「(速く|早く)書く」ことにこだわって作られているのがいいですね。